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味は格別、種類もいろいろ、上野産メープルシロップの楽しみ方。
仲澤 一男 67歳 林業・農業
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メープルシロップは、身近な里山でも。
メープルシロップといえば、ほとんどの人は北米カナダの特産品だと思っているのではないだろうか。実際、カナダは世界の全産出量の8割という圧倒的なシェアを誇っている。ところがここ日本で、しかも首都圏からもそう遠くない身近な里山で、メープルシロップを作るため、カエデの樹液を採取している人がいる。上野村の山の中腹、標高700メートルに自宅をかまえ、林業と農業を営みながら、森の中での暮らしを満喫している、仲澤一男さんだ。 「十五年くらい前、近所に住んでいる内山先生から、こんな山の恵みがあるよって教えてもらいました。この辺りは、干し柿だとか、蜂蜜だとか、甘いものには不自由しなかったから、それまでメープルシロップのことはまったく知りませんでした」内山先生とは、1年の半分を上野村で暮らしている、哲学者の内山節さんのことだ。 興味をもった仲澤さんは、知り合いから知識を得たりしながらも、ほとんどは山が直接教えてくれる自然の知恵に助けられながら、メープルシロップ作りに勤しむようになった。
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 仲澤一男さん
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近くにあった栗の木を使って、樹液採取の工程を教えてくれた
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カナダ産に決して引けをとらない、 上野産シロップ。
「季節は、1月から3月の、木が凍りつかない暖かい日。山でカエデを見つけたら、キリで幹に斜め下から直径10ミリほどの穴をあけます。穴にホースをつなげ、その先にはペットボトルか缶。時期にもよりますが、2リットルのペットボトルが1晩で、18リットル缶でも、1週間もあれば樹液でいっぱいになります」 採れたてのカエデの樹液は、人の味覚ではちょっと甘いかなと感じられるくらい。採取した樹液は山から自宅に持ち帰り、庭の薪ストーブで煮詰める。シロップにするのには40分の1にまで濃縮しなければならないので、それだけで1日がかりの仕事だ。燃料代もバカにならない。節約のため、シイタケ栽培で不要になったほだ木や雑木などを燃料に利用している。こうして、手間ひまを惜しまずに仕上げた上野産メープルシロップ。「カナダ産のものと比べても、まったく遜色がありません」と、仲澤さんは太鼓判を押す。
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イロハカエデのシロップは、 まろやかな風味。
「上野には、イロハ、イタヤ、ウリハ、ミツバなど、何種類かのカエデが生えています。みんな試してみましたが、私にはイロハカエデのシロップが一番でした。とても、まろやかな味がします」 メープルシロップのツアーを行ったこともある。とくに女性に喜ばれたそうだ。ただ、注意しなければならない点もある。 「この辺りの山は、自然のもののようですが、実はみんな持ち主がいるんです。ですから、勝手に樹液の採取をしたりすると、トラブルになりかねません。私も、自分の山だけで採取しています」 「自然の力はすごい」とも仲澤さんは言う。「採取のためにカエデに開けた穴は、翌年になるとすっかりふさがってしまうんです。かえって、人工的な詰め物などすると、穴がふさがりません」 最後に上野村でもっとも好きな季節を尋ねた。間髪を入れずに「6月だね」と仲澤さん。 「滴るような緑の山々に、霧がまいているのを見ると、あらゆる生命体の、ものすごい生命力を感じます」と、長い間山暮らしをしてきた人ならではの、実感がこもった答えが返ってきた。
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メープルシロップツアーに関するお問い合わせ
群馬県上野村 森の体験館 TEL 0274-20-7072
